北原 照久
きたはら てるひさ
ブリキのおもちゃ博物館 館長
昭和23年生まれ。東京都中央区京橋出身。ブリキのおもちゃコレクターの第一人者。1986年4月、横浜山手に「ブリキのおもちゃ博物館」を開館。その他、全国各地に博物館や常設のミュージアムがある。テレビ東京系列「開運!なんでも鑑定団」に鑑定士として出演。ラジオ、CM、各地での講演会等でも活躍中。
万象肯定、万象感謝
お天道様は見てる
「ブリキのおもちゃ博物館」がオープンしたのは、1986年4月7日、僕が37歳のときです。人脈ノウハウお金なし。その当時いつも言っていたのは、「レットイットビーと、ケセラセラ、ついでに背水の陣」。後戻りをする気はありませんでした。
最初はうまくいかないことも多かったです。住宅地だったので、お客さんの車が停まっていると近所からクレームがきたり、ごみが落ちていたらうちに来た人が落としたんじゃないかと言われたり……。よそ者として扱われるのはつらかったですが、本当にいろいろ勉強になりました。でも、苦労してわかったのは、前向きにやっていれば、神様は絶対背中を押してくれるんだということです。陰日向なくやらなきゃいけないんですよ。「お天道様は見てる」っていうように、人の見てるところだけ一生懸命やっても駄目なんです。どんなときもきっちりやる。たとえば、博物館の前の道を毎日掃除することや、挨拶をする、親孝行をするということも大事です。
現在は、常設展をしているギャラリー含めて、全国に5カ所の博物館があります。横浜、羽田空港、山梨県の河口湖、東京の京橋、宮城県の松島です。
言葉のコレクター
テレビ東京の『開運!なんでも鑑定団』は、1994年に始まりました。番組が始まって26年間、皆勤賞は僕だけですよ。小学校中学校のとき、学校に行かなかった反動で、高校からずっと真面目なんです。この番組はとても人気があって、おかげさまでテレビ、雑誌に出していただく機会も増えました。メディアを通して、多くの人に伝わるようにしているのは、きちんとした挨拶、明るく元気な笑顔、そして感謝です。
前回までの連載でも触れましたが、僕は、おもちゃなどの「物」だけじゃなく、「言葉」のコレクターでもあるんです。たくさんの心に残る言葉を集めています。そのなかでも、ある企業の会長さんに教えてもらった「万象肯定、万象感謝」はいつも心に留めています。全てを肯定し、全てに感謝するという意味です。人生にはいろんなことがありますが、全てはそれでいい、全ては正解。自分の人生にやってくること、何一つ無駄がないんだと思えば、勇気がわいてくるでしょう。
コレクターは一時預かり所
将来の夢は、宇宙に行くとか、いろいろありますが、その一つが「メガミュージアムを作る」ことです。現在、全国で展示できているのは、コレクションのうち2割くらいです。それを全部、多くの人に見ていただきたい。コレクションを通して、明治、大正、昭和、という時代を、日本人がどのように生きてきたか、どれほど高い技術を持っていたかが、伝わるはずだと考えています。その素晴らしさを伝えるためなら、全部寄付したっていいんです。
コレクターとは、一時預かり所なんです。僕が一時所有してるに過ぎないんですよ。良いものを、自分が所有している限りは大切にして、次の世代にしっかり伝えていくというのが、コレクターの役割だと考えています。その使命を果たす代わりに、手に入れる喜びを与えてもらっているのだと思います。